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しんどい時ほど笑っていた母に、生き方と強さを学び起業家の道へ

更新日:2020年11月4日



「僕はシングルにネガティブなイメージがないんです」と明るく話す西田陸くん22歳。突然の別れから6年後に再会した父の再婚。体力の限界まで仕事を頑張る母に深い愛を感じつつも、寂しさに耐えた小学生時代。やんちゃな反抗期を経て、大学在学中に起業する。この母あってのこの子ありっ!?な実態に本日は迫ってみます。


インタビュー:安藤 愛

取材日:2019年12月20日



” 再会した父の再婚と上手に騙してくれた母 ”

ーご両親の離婚のエピソードを教えて下さい。


僕はあまり「シングルに育てられました~」的な気持ちはなくて、今になって分かるんですが、母に上手く騙されていたんだと思います。


6才の時に「父さんは出張です」と言われて、そこから6年間は父は帰らず。中学に入る頃になって再会できました。


そこから父のところへ遊びに行ったり、泊まりに行ったり。僕は両親のどちらとも仲が良いし、連絡を取っている感じだったので、普通に両親がいるのと変わらない感じでしたね。


6年ぶりに会った父は再婚しており、相手の女性は「仲良しのすごい可愛いお姉さん」な感じで、「子供がいる」って言われても普通に「弟じゃん!」って、嬉しくなりました。




ーもし、仮にずっとお父さんと会えなかったら何か変わったと思いますか?


この年になったから言えることですが「同性だから話せる事」ってあるじゃないですか。だから、その部分で羨ましく思うかも知れません。


ただ、お母さんの仕事関係の人とか、血の繋がりは無いけど、本当に自分のことを大事に見てくれる人がたくさんいて、「愛情不足」なんて思いもしなかったし、むしろ普通の家庭よりよっぽど良いなぁと、思います。



“ シングルを気にせず育ったからそれが僕の『普通』でした “

ー陸くんにとっての「普通の家庭」って、どんなイメージですか?


なんか両親揃って超・円満でドラマに出てくるような家庭ってそんなになくて、何かしら「大人の事情」があるでしょ。


だから、両親が揃っているのが果たして良いのか?と、思うし「揃っている=良い」のイメージは全くないです。「普通の家庭」と「シングル家庭」のどっちが良い悪いじゃないんですよね。


片親のことを僕が気にせず話すと相手も気にせず話してくれるけど、「気にしてる子」が気にしてるっぽく話すと気にされてしまう。結局は本人次第だと思いますね。



“ しんどい時ほど笑っていた、母はひまわり! “

ー陸くんにとってお母さんはどんな存在ですか?


ヒマワリみたいです。オレンジや黄色の暖色なイメージで、よくみんな「太陽みたい!」って言ったりするけど、僕も一緒です。


逆にお母さんが寂しそうにしている姿や悲しそうな姿とか、見たことがなくて。さすがに小学生の高学年くらいになると察しますけど、小さい頃の自分の記憶には笑ってないお母さんはいないんです。


お母さんって人一倍愛情が強い人で、振り返った時に一番しんどくて頑張ってた時が、一番笑っていた感じがします。


凄いなっ!て。だから、お母さんの子に生まれてきてメッチャ良かったです。

*”ひまわり”のようなお母さんとのツーショット


“ 片親のレッテルより親の不仲の間にいる方が不幸だ ”

ーお父さんとお母さんが離婚してなかったらどうなっていたと思います?


子供としては「無理して一緒に暮らしているなら別れた方が良い」って、僕なら言うと思います。


隠していても空気感とか伝わるし、一緒にいる子供もストレスだし。逆にシングルの何が悪いのか分からないですもん。


両親が揉めていることが、隠していても子供にはホント伝わるんです。「片親」って言うレッテルを気にする前に、親の不仲を感じさせてる事を気にした方がよいと思います。


深くは理解してなくても6才の僕がそれを感じてたんだし。


シングルのレッテルを気にすれば、気にするほど子どもが可愛そうなことを分かって欲しいですね。


“ 縛るからこじれる?息子の反抗期とその後の心配 ”

ー息子の反抗期で悩むお母さんが多いんだけど、その辺に関して何かありますか?


もしかしたら僕だけかも知れないですが、縛れば縛られるほど反抗したくなるんで、好きにさせた方がその時期は良いと思います。


ちょっと中学・高校で遊んだ子の方が、コミュ力や礼儀、人付き合いや人情とか、人間的な力がつきますよ。


地元がけっこう悪くて、先輩とかがメチャクチャ怖かったんです。でも、そこで目上の人との接し方とか学びましたね。僕、先輩に気に入られるタイプだったんですが、実は気に入られるようにしてたんです。


今の仕事関係などの先輩の方と、上手く接することができるのもこの経験のお陰かも知れません。




ー反抗期も含めて息子が心配でつい縛っちゃうお母さんに何かアドバイスはありますか?


子供とは「友人」くらいの感覚でいた方が良いし、怒るならもったいぶった方が良いです。本当にダメな時だけ怒れば良いと思うし。


僕の友人が僕がいないのに家に居て、ウチのお母さんが作ったご飯をお母さんと一緒に食べているんですよ。「何やってんのっ?」って感じですが、それがすごく良くて。


多分、母はなにか意図があってそうしていたと思うんですが、けど、それが良くてとても過ごしやすかったです。


思春期に子どもが「悪い方」へ行っちゃう時ってあるじゃないですか。それって、親子関係が良好なら放し飼いでもそっちには行かないし、行っても戻ってこれると思うんです。


「家がない」とか居場所のない子が「行き切っちゃう」気がします。


お母さんは敢えて自由にさせてた感があるんです。でも、それって「何があっても信じてる」ではなくて、「信じてたから何かが生まれる」って感じでした。



“ 片親で育った僕の結婚感と忘れきれない寂しさ ”

ー片親家庭の子って、結婚感とか持ってない子がいるけど、陸くんはどうですか?


結婚はメチャしたいです。だけど、相手を選ぶのはちょっと慎重になります。絶対に離婚はしたくないんで。シングルにネガティブなイメージは持っていないけど、離婚してきつくなるのは自分や相手より子どもだから。


思い返して今の僕がしゃべるのは良いんですけど、小学校の3・4年の頃が一番しんどかったんです。24時間学校から帰ればずっと1人で、ご飯もなくて、1日1コ菓子パン買って食べてた時期があるんです。そりゃーキツかったですよ。


僕はシングルの中でも恵まれてた方だけど、それでもそんな時期ってあるし。それは別に経験しないでも良いことだし。忘れたくないですよね、やっぱり。


兄弟がいたら全然違っていたと思うけど、今だに1人は嫌いで誰かといないと不安ですね。でも、おかげでたくさんの人と繋がれて、友達もたくさんいます!(笑)

*幼少期の陸さん



“ 母から学んだビジネスマインドと広がった頑張るのキャパシティ ”

ー自分がリアルに結婚するとなったら、何が変わりそうですか?


今、自分1人でビジネスをやっていて、3月か4月に登記する予定なんです。それって攻めてるし、すごいリスクも背負っているし。それができなくなる心配があります。


人生ってRPGみたいです。みんな守りすぎだし、守ってるだけなのに不満を口にする。


僕が営業代行の仕事をしているのは、商品がなくても集客と営業ができればお金が作れるからです。パートではなく、ビジネスするお母さんを見て、自分も「1人で稼げないといけない!」と感じて、小学生のころから「お金持ちになりたい!」って思っていました。


お金持ちになって、なにか良いことが!とは、思っていないですが、逆に「お金を稼ぐことが悪」みたいな風潮はすごいイヤです。僕がビジネスをするモチベーションは圧倒的な反骨心と反面教師を持っているからです。


起業は難しいって言うけど、それはやってないから難しく感じるだけで、実際モチベーションなんていらないし。難しいって、誰が決めてんだろう?って話しです。僕からしたらサラリーマンになる方が難しいです。


お母さんが自分でビジネスをして、本当にぶっ倒れるんじゃないかっ!?て、くらいに頑張ってるのを見ていたから「頑張る」の言葉の範囲が広がりました。


こんな考えになったのもお母さんがいたからだと思うし、ホント、感謝していますね。


取材を終えて

取材中、ずっと伝わってきたのはお母さんと陸くんの絆の強さ。私自身、8歳と5歳の子を育てるシングルマザーのため、子供の視点やビジネスをする母親の葛藤など、色々と重なるところがあり、思わず泣けてしまうほど感情が揺り動かされました。


お母さんは近所にあった「プレイパークに息子は育ててもらった」と思っていたが、本人にとっては「ただの原っぱ」。離婚後に引っ越してからは「プレイパークが学校のグラウンドに変わっただけ」と言い切る彼の横顔に、親が思う以上に子供のたくましさを垣間見ました。


シングルは否定しないけれど感じた寂しさは確実にあって、それでもなお母の生き方を肯定し自らもビジネスの道を選択する陸くんに、勇気と感動をもらいました。


親子でありながら上下の関係ではなく、1人の人として関わる大切さを教えてもらった西田家のストーリーに、私自身もシングルのビジネスママとしてとても考えさせられる、深い時間となりました。


インタビュー:安藤愛

取材日:2019年12月20日




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